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好色一代男—恋愛遊戯 その果ての果て—

好色一代男—恋愛遊戯 その果ての果て— 表紙イメージ

[著者] 南風潤輝

チズルは、渋谷にあるオフィスで恋愛や冒険のゲームソフトを作っていた。
業界では名の知られる存在で、ゲーム王とさえ言われていた。勝ち組みの中の図抜けた成功者として、何度か著名な雑誌に取り上げられた。
成功者!チズルは、そう言われれば言われるほど、自分は失敗した人間に思えた。
恋愛や冒険のゲームを作りながら、実際には恋愛や冒険とはまったく縁がなかった。
コンピュータソフト製作に没頭する日々の中で、いつかしか、自殺関連のサイトにアクセスするようになった。
チズルには、同行者を求める匿名の人間の言葉がなぜか魅惑的に見えた。
死ね、死ね、死ね!殺せ、殺せ、殺せ!そんな言葉がチズルの身体の中で反響し充満していた。
ある日、突然、切れた。会社に辞表を提出し、『好色一代男』の主人公世之介が、「好色丸」で女護の島へ繰り出したように、冒険、恋愛、快楽を求めて、南米へと旅立った。チズルは、陸路南下し、肌の色の違う夥しい数の女たちと関係し、性愛の技術を身につけた。
まるで太陽が身体の中に充満し、大爆発を続けてきたような日々。
おれは生きている!おれは生きている!そう叫び続けた。
最後に辿り着いたのは快楽の街、リオ・デ・ジャネイロ。そのときにはITバブル崩壊から無一文。
黒人娼婦サンドラとの究極の快楽の日々を送ることになる。
サンドラの周囲には、いつも腹をすかしているポアラ、黒魔術を行うシモニー、そしてチズルを誘惑するサンドラの妹の尻軽女バレーラと、白人娼婦のアレキサンドラがいた。
チズルはバレーラとアレキサンドラの誘惑に抗しきれない。
裏切りが発覚し、サンドラに性の奴隷に仕立てられる。
さらに、 サンドラは復讐のために、妹のバレーラにはチズルとの激しい性行為を見せつけ、アレキサンドラには黒魔術(マクンバ)をかける。そして最後に辿りつく二人の究極の愛。
生の裏側にある死の匂いが、全編にそこはかとなく漂ってくる作品。本編の根源的な問いかけは——民族とは何か?
快楽とは何か?
愛とは何か?
生きるとは何か?
美しくも残酷な街、リオ・デ・ジャネイロを舞台に繰り広げられる青春文学の金字塔。

定価:330円(本体300円+税10%)